大堀相馬焼の作り手が目指す伝統と革新、伝統技術を生かした新しい価値づくりへの挑戦

今年で5年目となる「ふくしまみらいチャレンジプロジェクト」でサポートしている大堀相馬焼の企画では、今年度はコロナ禍の影響でこれまで通りの事業ができず、再び逆境に立たされた事業者も数多くいた状況などを踏まえ、「再興」をテーマにしたPRプロジェクトとすることに。大阪京町堀・東京墨田を主な拠点とするデザインプロデュース会社「セメントプロデュースデザイン」と協業して企画いたしました。

今回の企画では、大堀相馬焼の作り手が伝統と革新、伝統技術を生かした新しい価値づくりへの挑戦を目指し、大堀相馬焼の特徴の一つである“貫入(かんにゅう)”のひび割れ模様を切り口に、民窯として栄えたルーツをもつ大堀相馬焼が日々の生活に浸透していく様子(模様)とかけ「ひびのもよう」をタイトルとしたPOPUP展示販売を東京と大阪で開催しました。

震災後、新たな場所で再興をしてきた窯元たちは、それぞれの持ち味を生かして新たな挑戦をしてきています。今回、セメントプロデュースデザイン代表であり、クリエイティブディレクターの金谷 勉氏によるプロデュースが入ることで、伝統的な大堀相馬焼の技法や特徴を生かしながら、現代のライフスタイルに馴染む作品へと昇華させた新たな大堀相馬焼がお披露目されました。

金谷氏による窯元視察の様子。視察後2カ月という急ピッチで作品の開発が始まりました
陶徳(すえとく)窯

貫入と釉薬の新しい表情を追求したマグカップ

陶器の一部分の貫入模様を目立たせたり、白くてマットな釉薬と大堀相馬焼の伝統的な緑色の釉薬の二種類をかけ分けたりするなど、新しい表情を追求するアート作品のような5種類のマグカップを作りました。貫入模様は大きさや入り方をコントロールするのが難しいため、一点ずつ表情が違います。

京月窯

それぞれの釉薬の表情を楽しむ器

釉薬の重ねがけによる垂れたり混ざり合ったりする表情を味わっていただくため、高さのある富士山型の器をサイズ展開。震災前、浪江で焼いていた時には青磁を出すために砥山石を砕いて作っていましたが、今ではそれに変わる土灰や藁灰、珪石とか色々な組み合わせをしてやっと近い色を出すことを実現。伝統技術のベースの上で、独自の方向性を見出し作陶していく京月窯の器の、凛とした美しさを放つ佇まいを楽しむことができます。

いかりや商店

白相馬と透明なひび割れの繊細な美しさ

大堀相馬焼の伝統技法と、特徴的な白い土を使った「白相馬」のマグカップ。洗練された雰囲気を醸し出す器全体の薄さと、白相馬のガラス質の釉薬と透明な日々の繊細な表情を楽しむことができます。今回、次世代の担い手としていかりや商店で大堀相馬焼の伝統技法を学ぶ、吉田直弘さんのマグカップも展示販売しました。

あさか野窯

郡山の風土を感じる、二重構造のフリーカップ

大堀相馬焼の特徴である二重構造により、冷たいものは結露せず、熱いものは取っ手がなくても温度を気にせず素手で持つことができるフリーカップ。あさか野焼の特徴である、鉄分が多く、焼成するとこげ茶色になる郡山市の土により素朴で温かみのある色合いと粗目の手触りを楽しむことができる。

また、今回のPOPUP販売では、コロナ禍で窯元が店頭で説明をする機会を設定するのが困難なことから、オンラインで工房と売場をつないでしまいます。店舗へお越しになったお客さまと窯元が直接オンラインでコミュニケーションをすることで、ものづくりへの思いやどんな時に使ってほしい商品なのかを知ることができて購買につながったケースや、お客さまから「こんな商品があったら欲しい」というニーズをいただき、今後の商品開発のヒントを得ることができ、関係者一同、学びのある機会となりました。

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