All Japan Silkプロジェクトと題して、川俣シルク事業である有限会社 紺野機業場が発起人となり、「川俣シルク」の魅力を新たに感じていただく茶会イベントを京都市と福島県郡山市で開催しました。経済産業省の委託事業「令和元年度 地域の伝統・魅力等発信支援事業(地域の伝統・魅力等発信支援事業)」によって採択された本企画において、本田屋はP Rサポートとして関わりました。
All Japan Silkプロジェクトとは
日本の風土で育った伝統文化は、暮らしの変化や多様化などにより衰退してきており、絹に関する産業においても、養蚕や伝統の織物の生産が急激に減少しています。また、従事者の高齢化や後継者不足、海外製の安価な輸入商品などの影響から、日本におけるものづくりを次の世代へいかに残していくかが課題となっています。みちのくの玄関口で発展してきた「川俣シルク」の産地である福島県川俣町も例外ではなく、高度経済成長期には横浜経由で輸出が盛んとなった「横浜スカーフ」の生産を支え、日本でも有数の羽二重、スカーフ素材の産地として最大300軒近く機屋が存在していましたが、現在は4軒を数えるほどになってしまいました。
有限会社 紺野機業場の「川俣シルク」は、全国各地の伝統工芸品に採用され、日本文化の下支えを担っています。連綿と受け継がれてきた日本の伝統を未来に残すために、国内の製糸・機織・染色に従事する事業者およびデザイナーとの連携により、国産シルクを織り上げ染めた絹布を用いて茶室空間と衣装を制作し、「川俣シルク」の美しさと新たな魅力を伝えるとともに、次世代の担い手に向けてその内容を発信していくプロジェクトです。
「繭の茶室」茶会 ―めぐり―
コンセプト
蚕は、メビウスの輪のように円運動を繰り返しながら糸を張り巡らせ、繭を形成していきます。途切れることのない糸は、長さ約1500m ともいわれ、自らを守る尊い空間です。希少な国産シルクを用いた織物で構成する「繭の茶室」は、繭の構造から構想を得て、竹の躯体に極薄の二重織「川俣シルク」を張り巡らせて制作した茶室空間です。また、茶人が着用する衣装には、古法の藍染めと貝紫で染めたシルク生地や糸をシルクオーガンジーと掛け合わせ製作しました。
透明感のある柔らかな円形の空間に包まれ、一服のお茶をいただきながら過去・現代・未来へと脈々と続く絹文化と人々の営み、そして自然界に思いをめぐらせる場となりますように。
京都開催
⽇時:2019 年12 ⽉19 ⽇(⽊)午後1 時〜5時
会場:有斐斎弘道館(京都市上京区上⻑者町通新町東⼊ル元⼟御⾨町524-1)
福島開催
⽇時:2020年1 ⽉26⽇(日)午後1 時〜2時
会場:21世紀記念公園麓山の杜「麓山荘」(福島県郡山市麓山1-16-17)
全国のシルク事業者とクリエイターによって出来上がった空間
数寄屋建築の中に、川俣シルク生地を使った繭の形を模した茶室空間を作りあげるところから茶会は始まります。蚕が最初に吐き出す糸「きびそ」を使い、竹の躯体を1本1本手で結び、極薄の二重織りの川俣シルク生地で包みました。極薄の生地なので、中の様子が透けて見えるのですが、その光の入り具合が絶妙に美しく、見る時間帯に応じて光の入り方が変わり、様々な表情を見せてくれました。茶室に用いた生地は群馬県の碓氷製糸で国産繭から製糸した絹糸を使用して織り上げています。
この茶室空間は、建築家の大橋史人さんに設計いただきました。毎回茶会のたびに一から組み上げるため、竹の組み方や作るメンバーなどによって形状が変わる設計となっています。そして設営する会場も京都と福島では異なるため、京都会場の有斐斎弘道館では、建物のクラシックさの中にダイナミックな繭の茶室が誕生し、一方、福島会場の麓山荘では、明るい天井や柱の空間の中に緻密な構造の繭の茶室ができあがりました。
そして茶会が終わると繭の茶室は解体され竹とシルク生地に戻ります。毎回茶室に入るお客さまも変わり、まさに“一期一会”の茶室空間です。
茶人の衣装用生地は、宮崎県の綾の手紬染色工房の秋山眞和さんと二上拓真さんによって天然の高貴な染めが施されました。参加者から「まさしく天女のような高貴な茶人であった」と感想をいただいた茶人の衣装は、服飾デザイナーの鷲尾華子さんがデザイン。今回のイベントは、使用するもの全てが川俣町を中心とする日本のものづくりでご用意した茶会となりました。
茶会では、有斐斎弘道館の太田逹先生と茶人の三窪笑り子さんとクリスティーナさんよるおもてなしで参加者にお茶菓子と茶室空間でのお茶を楽しんでいただきました。待合から茶室までの空間の中に、季節の訪れや茶会のコンセプトなどを軸や活ける花、桑と繭をイメージしたお茶菓子できめ細やかに演出いただき、最高のおもてなし空間となりました。
All Japan Silk Project参画事業者
■発起人・機織:有限会社 紺野機業場
■製糸:碓氷製糸株式会社
■染色:綾の手紬染織工房
■企画・デザイン:HANA DESIGN ROOM 鷲尾華子
■茶室躯体設計:大橋史人
■撮影:宮下直樹
■PR:本田屋本店有限会社
撮影:宮下直樹(Terminal 81 Film)
「繭の茶室」の詳しい様子はこちらからもご覧いただけます。